上肢(肩、腕)のけが・後遺障害

上肢の傷害

上肢とは、肩から腕、手までの部位を指します。
交通事故により、肩関節、肘関節、手関節に生じた傷害による後遺障害は、①欠損障害、②機能障害、③変形障害、④醜状障害の4つが後遺障害等級認定の対象となります。
以下では、上肢の傷害としてよく見られる肘関節の骨折について解説します。
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橈骨頭(頚部)骨折

肘関節における骨折の1つです。肘を伸ばした状態で手をついたときに受傷することが多く、交通事故では肘を伸ばしてバイクを運転していたときに受傷することが多いケースです。

ただし、この部位だけの骨折は稀で、多くの場合、上腕骨内上顆骨折、尺骨近位端骨折、尺側側副靭帯損傷などを合併します。
治療方法としては、骨のズレがない場合には、ギプス固定で骨癒合を図ります。ズレがある場合は、スクリューによる固定術が行われます。粉砕骨折にまで至り、不安定性のあるものは人工橈骨
頭置換術、不安定性の少ないものは橈骨頭切除術をせざるをえなくなります。

握力の低下や、遠位橈尺関節の不適合による手関節の機能障害が生じることがあります。
他の骨折等を合併する場合、治療に1年近くを要し、10級以上の後遺障害を残す可能性が高いです。しかし、本傷病名のみの場合は、そこまで深刻にならないことが多いです。
 

肘頭骨折

肘頭とは、尺骨の近位端部にある丸みを帯びた突出部のことであり、肘の頂点の部分です。肘頭骨折は、この部分に外力が加わることで生じます。バイクを運転しているときに交通事故に遭い、転倒時に肘を強打したことで受傷することが多いケースです。

また、肘頭は、上腕三頭筋により上方へ引っ張られているので、これが骨折しますと、骨にズレが生じます。

痛み、腫れ、関節の可動域制限といった症状が起こります。
骨折した肘頭の骨片が多数にわたるときは、AOプレートを用いて固定されています。 骨のズレが少ないものは肘関節を90°に曲げた状態でギプスでの固定を4週間行いますが、ズレの大きなものや粉砕骨折を合併したときなどは、手術をして固定します。
 後遺障害として、肘関節に可動域制限が認められる場合は、10級10号又は12級6号が認定されます。
 

上肢(肩、腕)の後遺障害

交通事故に遭うと肩や腕に強い衝撃が加わることが多く、肩や腕に後遺障害を負われてしまう方は少なくありません。肩や腕は上肢の5つの骨(鎖骨、肩甲骨、上腕骨、橈骨、尺骨)で構成されていますが、骨折や脱臼、神経麻痺に伴って上肢の後遺障害が発生します。
 
上肢の後遺障害の具体的な症状としては、「骨折などの骨癒合が不良である」、「腕を失ってしまった」、「肩の可動域が制限されてしまった」などが挙げられます。
 
上肢の後遺障害の認定基準は以下の通りになります。
 

上肢の後遺障害の認定基準

①上肢の欠損障害

等級 認定基準
1級3号 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
2級3号 両上肢を手関節以上で失ったもの
4級4号 1上肢をひじ関節以上で失ったもの
5級4号 1上肢を手関節以上で失ったもの
 

②上肢の機能障害

等級 認定基準
1級4号 両上肢の用を全廃したもの
5級6号 1上肢の用の全廃したもの
6級6 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10級10号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
 

③変形障害

等級 認定基準
7級9号 1上肢に仮関節を残し、著しい運動障害を残すもの
8級8号 1上肢に偽関節を残すもの
12級8号 長管骨に変形を残すもの
 
上肢の後遺障害においては、可動域の測定についても十分に注意をしなければなりません。医師や作業療法士によっては、可動域の測定を行った事がないため、起点を知らないという方もいらっしゃいます。
 
可動域がわずかに認定基準に満たないために、本来であれば得られたであろう等級認定が得られないこともあるのです。そのため、後遺障害診断書作成時の可動域の測定においては、可動域の測定について正しいノウハウを持った専門家のサポートが必要不可欠といえます。
 
交通事故に遭い、手や肩などにこのような症状がある場合、後遺障害を抱えられている可能性があります。適正な後遺障害等級の認定を得るためには、個別に適切な対応方法を取らなければなりませんので、お気軽に当事務所までご相談下さい。
 
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