主婦(主夫)の休業損害について

1 主婦の休業損害とは?

主婦(主夫)とは、一家の家事の切り盛りをする女性(男性)のことをいい、職に就かないで家事育児に専念する主婦のことを専業主婦(専業主夫)といいます。
 
交通事故の損害賠償の場面では、専業主婦(専業主夫)のことを家事従事者と呼びます。主婦(主夫)が交通事故被害に遭って怪我をし、家事育児介護等の家事労働ができなくなった場合に休業損害を請求できるかどうかについては争いがありました。
 
なぜなら、家庭内で行う家事や育児は、誰かから給料をもらって有償で行われるものではないからです。この点、昭和57年の最高裁判例は、「妻の家事労働が財産上の利益を生ずるものであり、これを金銭的に評価することが不可能とはいえない」と述べ、主婦であっても交通事故によって家事労働ができなくなった場合には休業損害が生じると認めました。主夫の場合でも同じです。
 
ただし、このように家事労働が財産上の価値を生じるものといえるのは、他人のために家事労働を行う場合であり、1人暮らしで自分自身のために家事を行っていた場合は、自分が生きるために行っているもので財産上の利益を上げる労働力の提供が無いといわざるをえません。したがって、休業損害が否定される場合が多いです。
 

2 主婦の家事労働の1日あたりの金額は?

主婦は給料をもらって家事を行っている訳ではないため、家事ができないことで損害を被ったといっても、その金額がいくらになるのかが大きな問題となります。
 
ここで、毎年、厚生労働省が実施している「賃金構造基本統計調査」の結果をまとめたものとして賃金センサス(略して「賃セ」)という統計があります。この統計を見ることで、年齢別・学歴別・性別・職業別等の属性ごとの賃金の平均的な値を知ることができます。交通事故の損害計算においてこの賃金センサスは広く用いられます。主婦の休業損害を算定する場合にもこの賃金センサスが使用されることが多いです。
 
平成30年の賃金センサスによると、女子の全学歴全年齢平均の賃金センサスは、382万6300円となっていますので、1日当たりの家事労働の金額は、382万6300円÷365日=1万483円になります。ただし、被害者が高齢の主婦(主夫)であった場合には、担っている家事労働の量が少ないことが多いため、全年齢の平均賃金より低い金額である年齢別の賃金センサスの値が用いられることもあります。
 

3 主婦の休業損害の算定方法は?

1日あたりの家事労働の金銭的な評価は上述した通りですが、症状にもよりますが、症状固定日までの間、全く家事労働ができなかったという事態になるのは希だと思われます。
 
そのため、過去の裁判例においては、
①事故から1カ月間は家事労働が100%できなかった、3カ月までは70%パーセントできなかった、6カ月までは50%できなかった、というように、傷病名や症状の推移を踏まえつつ、家事労働ができなかった程度を%で数値化し、症状固定日までの間に%を逓減していく方法や、
②実通院日数分は100%家事労働が出来なかったという前提で、
交通事故が発生した年の賃金センサスの女性の学歴計・全年齢平均賃金÷365日×実通院日数分
の休業損害を認める例が多いように思われます。
 
なお、自賠責保険の基準では、事故発生日が令和2年4月1日以前の場合は1日あたり5,700円、事故発生日が令和2年4月1日以降の場合は1日あたり6,100円という額で算定されます。
 

4 兼業主婦の場合は?

パート等の仕事をしながら、主婦として家事労働にも従事している主婦(主夫)のことを兼業主婦(兼業主夫)と呼びます。兼業主婦(兼業主夫)の場合、仕事をして得た給与収入があることから、休業損害の算定にあたって、主婦(主夫)としての基礎収入を基準とすべきか、仕事によって得ていた収入を基礎収入として算定すべきかが問題になります。
 
この点、過去の裁判例では、給与収入(パート等の仕事によって得ている収入)が賃金センサスの平均収入を超えるときには給与収入を基礎とし、給与収入が平均賃金以下のときは、平均賃金を基礎収入として算定する、という考え方をとるものが多いです。
なお、仕事をしながら家事労働も担っている場合、事故に遭ったことで、仕事も家事も休業せざるをえない事態が生じることもあると思います。しかし、このような場合でも、仕事を休業したことによる損害か、家事労働ができなかったことによる損害かのいずれかについてしか請求できないとされています。これは、兼業主婦(兼業主夫)が労働に従事している間は、その分家事労働を制限しているという考え方に基づくものです。
 

5 保険会社の提示金額に注意!

保険会社が提示する賠償金の内訳をみると、兼業主婦(兼業主夫)としてパート等の給与収入がある場合に、その収入額を基礎収入として休業損害を算定している場合があります。
 
しかし、兼業主婦(兼業主夫)の場合、扶養の範囲内で働いている方も多く、パート等の収入を基礎収入として計算すると休業損害が著しく少なくなってしまう場合が多いです。
裁判所の考え方は上述のとおりですから、保険会社の提示に惑わされず、賃金センサスの平均収入と現実の収入を比較して、多い方を基礎収入額であると主張することが大切です。
 
主婦(主夫)の休業損害はまとまった金額になることが多いため、上述の点を踏まえて十分な賠償を受けるためにも、専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。
 

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